別表の体系を知る(基礎編)

 

特集「別表の体系を知る(基礎編)」別表五(二)編

   
  今回は、前号の租税公課に続いてもう少し税金についてお話をします。
  内容は「納税充当金」についてです。
  納税充当金は損益計算書の下の方に「税引前当期純利益」の次の行(下段)あたりにあると思います。
  実際の科目名称は「法人税等」(正式名称は「法人税・住民税及び事業税」)などに登録されていると思います。
  スーパーストリームの損益計算書を確認して戴ければ幸いです。
  今回は、この損益計算書の「納税充当金」部分のお話になります。
   
  ■「別表の体系を知る(基礎編)」別表五(二)の構成
  納税充当金について
    1. 納税充当金の設定時の損金不算入
    2. 納税充当金の取崩
    3. 納税充当金の設定と取崩しによる納付のまとめ
  おわりに
     
   

納税充当金について

   
  1. 納税充当金の設定時の損金不算入
    納税充当金は一般的に損益計算書の「税引前当期純利益」科目の後にある勘定科目となります。
    この納税充当金は法人税、住民税、事業税など当期中に損金経理した合計の金額になります。
    つまり、当期中の「儲け」に対する税金(事業税は除く)となり、決算処理後、2ヶ月後の末日に納付されるものとなります。
    たとえば、3月31日が決算の法人であれば5月31日が納付期限となります。
    よって、申告納税方式では、原則としてその申告書を提出して(5月31日)、初めて債務(支払金額)が確定します。
     
    法人税法では支払金額が確定して、初めて損金性があると考えてますので、債務が確定していない決算時(3月31日)では、納税充当金の設定
    (法人税等(借方)/未払法人税等(貸方))は、見積計上の段階であるため「損金不算入(別表四の5(損金の額に算入した納税充当金))(加算・
    留保)」の税務調整処理が必要となります。
       
 
 
  2. 納税充当金の取崩
    納税充当金の取崩しは翌期(例題では11期)の5月31日納付に向けて行われると思います。
    取崩し時の仕訳 : 納税充当金  1,200 /現預金  1,200  (一般的には法人税等  1,200/現預金  1,200)
     
    この仕訳であれば、費用、収益科目はなく、税務調整の必要はないように思われますが、法人税法の考えは理論上、下記の処理を行います。
     
     
 
    一旦、納税充当金を取り崩し、取崩益で収益計上とする。
      収益計上した納税充当金を別表四で全額(減算・留保)します。
      なぜなら、前期に設定(上記の「1.納税充当金の設定時の損金不算入」を参照して下さい)した段階で加算・留保して既に課税済みのため
      当期において課税(二重課税)されないよう税務調整により全額(減算・留保)します。
       
    取崩しした上で、税金を現預金で支払うとき、租税公課で費用計上とする。
      この時、納付した租税公課の内、法人税(本税)、住民税(本税)は損金不算入の扱いになりますので同額を「加算・留保」しなければなりません。
      ただ、実務では、法人税(本税)、住民税(本税)を①で減算・留保して②で加算・留保行うようなまどろこしいことは行いません。
      実際は、法人税(本税)、住民税(本税)を①で減算・留保して②で加算・留保するのであれば相殺しますので事実上何も「しない」ということになり
      ます。結果として両者を通算して税務調整は行わないということです。
       
    そこで、租税公課の法人税(本税)、住民税(本税)以外の金額は「減算・留保」(別表四の15)し、その「減算・留保」した金額のうち損金不算入と
    なる附帯税が含まれている場合には、別途「加算・社外流出」(別表四の6)する必要があります。
 
     
  3. 納税充当金の設定と取崩しによる納付のまとめ
    納税充当金取崩しの内、法人税(本税)、住民税(本税)は何もしないので、残りの税目(400円)で減算・留保の税務調整を行います。
    ただし、損金不算入の附帯税70円は(加算・社外)ですので、別途「加算・社外流出」(別表四の6)で税務調整が必要です。
    (加算・社外)と(減算・留保)の相殺は別表五の内容がくるってしまうためです。
    損金となる附帯税、事業税はそのまま損金ですので税務調整は行いません。
     
    なお、納税充当金は通常、法人税(本税)、住民税(本税)、事業税の本税部分ですので、附帯税を払うということは考えにくいです。
    よって、納税充当金取崩から法人税(本税)、住民税(本税)を引いた残りの事業税部分だけを減算・留保すると考えてもいいのではないでしょうか。
     
   
  終わりに
    次回の特集は、前号の租税公課と今号の納税充当金と併せて具体的に「別表五(二)の書き方」についてお話をします。